こちらのnoteを読んで、とても「わかる!わかるぞー!」と思い、俺も書き殴りたくなったので書きました。
そももそもあんまりゲームは何本も買う方じゃないんですが、Ghost of Tsushimaをトロコンするまでプレイして「今年は良いゲームに巡り会えたな」とか思っていたところに現れた『天穂のサクナヒメ』はとっても良いダークホースでした。
世間で取り沙汰されてるとおり、稲作だとかしっかりとした横スクロールアクションとかももちろん良かったんですが、エンディングがエモすぎて一気に個人的GOTYが塗り替えられてしまいました。
以下、どこが心に刺さったのか簡単に切り分けつつ書き出してみました。
ミルテのかなわない約束
これは🍏の解釈なので実際の設定とは違うかもしれませんが、エンディング近くでミルテと田右衛門が叶わぬ約束をしているシーンがあります。
ヒノエ島で長く過ごすうちにそれが当たり前になってしまい、本来は布教の旅の途中であるはずのミルテが「また来年も…」と言ってしまった自分に驚愕したりの一連の流れです。 そしてある夜、ミルテと田右衛門が二人きりで話すシーン。 「自分は元の世界に戻らなければならない、サクナ達と出会い培ったいろいろなことを故郷に持ち帰り広めなければいけない。いつかそれを終えたら、また…」 といった事をミルテが田右衛門に話しているのをサクナは聞いてしまいます。
でも再会することは多分不可能なんですよね。 食事シーンで語られる、ミルテの国からヤナトにやってくるまでの話を聞くかぎり、とても簡単に往復できる距離ではない。 戦国時代くらいの日本とヨーロッパの距離感です。 そもそも一度麓の世に戻った後に頂の世に戻ってこれる可能性はほとんど無い。 もう田右衛門着いていけよ!とか思っちゃうんですが、そこでしっかり別れを描くというあたりがこの作品の憎いところ。 田右衛門は戦ばかりの麓の世に戻れない一方で、ミルテは宣教師としての役目を果たさなければならない。 この作品はそれぞれの心の傷と決意を蔑ろにして大団円にはしなかった。 しっかり別れを描いた。 それが(いい意味で)しんどい。
しかも、エンディング見た後の喪失感が冷めやらぬまま、ローンチトレーラーを見返してみたらまたヤバい。
冒頭のキャプション:
遥か東方の果て ヤナトの国あり
古来よりこの地では神の世と人の世
すなわち"二つ世"があると信じられてきた
これは我が布教の旅の中 異教の神サクナと出会い 共に暮らした日々の記録である宣教師ミルテ著 "耶那土見聞記"より
トレーラーでもうミルテが帰ってしまうことが思いっきり示唆されてるじゃん!!!!!11
2度も喪失感を味わう羽目になったわけですよ。 ローンチトレーラーで辛い気持ちになるとは思わなかった。
ゲームの当初の設定ではこんなキャラではなかったミルテをここまで心を抉るキャラクターにしたのは凄いと思うわけです。
ミルテは元々は普通のお姉さんだったんですが、キャラが弱いという話になり、異国から来た宣教師という設定に落ち着きました。
— なる (@nal_ew) September 30, 2020
異文化を持つ彼女がいることで、より世界観が掘り下げられる会話が発生しやすくて、とても面白いキャラになってくれました。#SAKUNA https://t.co/mTvmqr1r82 pic.twitter.com/uXYleLmBOE
ゆいのかんざし
エンディングでヒノエ島を去るきんたを見送るゆいの後ろ姿が写ります。 その頭には無骨な風車の形のかんざしが刺さっています。
ゆいがいなくなったイベントできんたが話していた「作ってあげると約束したかんざし」が、エンディングのここぞというタイミングでしれっと映り込んでいるんです。 そしてカメラが切り替わり、笑顔で見送るゆいの姿を写します。 きんたはいつものスンとした顔で振り返っています。 いつもの二人の姿なんですが、その間にも素晴らしい「ヤナト田植唄」と、二人が今生の別れであることを暗示するかのようにその後の二人の行く末を書いたキャプションが表示されています。 こういう演出は他のゲームなんかでもたまに見かけますが、とっても心が抉られて大好きな演出です。
やり込みプレイができない
プレイ後のやりこみがエンディング前の状態のループなのがつらい。
こんなに心を抉るエンディングを見せられた後に、「やり込みプレイはエンディング直前の状態で進行します」とか言われても辛いわけですよ。 あんな別れをした/する仲間たちが、これまでの姿のままいつものように家にいる姿なんか見てられないわけですよ。 どうしてもそれに気が向いてしまって2周目プレイに着手できませんでした。
ボリュームがちょうど良かった
エモい点というわけではないですが、ゲーム全体のボリュームがちょうど良かったと思ってます。 あんまり超大作だとやってる途中でフェードアウトしちゃったりすることもあるんですが、サクナヒメがちょうど物足りないくらいでした。 ストーリー的には伏線回収しきってないけど、クリア後の喪失感がとっても素晴らしかったんですよね。 そして上にあげた諸々の心を抉る点たちの、その衝撃たるや。
ヤナト田植唄の歌詞が良い
まだサクナヒメの余韻が抜けてなくて、作業用BGMのランダム再生でゲーム主題歌が流れてくる度にパフォーマンスが落ちる。
— りんご🍏 (@mstssk) December 7, 2020
仕事中にYouTube Musicのランダム再生をBGMにしているんですが、「〽️植えよ〜 根付けよ〜」と始まる度に手が止まってしまいパフォーマンスが落ちてます。 エピソード記憶としてしっかり残しってしまっているので、歌い出しでもうエンディング直後の感情が思い出されてむしろ辛い。
実際の田植え唄を編纂して作ったというのがまた素晴らしくて、作品世界と現実を地続きにしてくれてるような気持ちになります。 エンディングのキャプションでも「作詞:不明」になってるし、YouTube Musicの概要欄の作詞者情報もpublic domainになってます。 歌詞については、冒頭に書いたnoteの記事も必見です: https://note.com/tekken8810/n/n39f146378c70
作詞者は不明なんですけど、当時日本中の民謡を聴き漁って書いたとかでCD貸してもらったりした。
— なる (@nal_ew) November 21, 2020
東北がえらく多くて(多分保存会とかの活動が活発)、近畿なんかは1つくらいしかなくて笑った。https://t.co/sDxCPiwwok
あとは、前半でしっかり振ったあとにCパートあたりでそれを逆手に取るみたいな歌詞の作りになっているのが単純に好みです。
ひたすら南南西を目指して歩いてから「北北東は後方にその距離が誇らしい」とか「四方に広がる金色を これぞ我らが誉」みたいな歌詞に弱い事がわかった。
— りんご🍏 (@mstssk) December 18, 2020
ちなみに、楽曲や朝倉さやさんについて調べているうちに、朝倉さやさんのプロデューサーががん再発で余命宣告されているという情報を見てしまい余計に心にきたりしました。
感想がしんどいとかつらいとかばっかりだけど、それもまた作品の魅力
大団円ですっきり終わる作品ももちろん良いんですが、すっきりすぎて感情が右から左にスッと抜けてしまったりもするわけです。 良くも悪くも観た人に強い印象を与えて、「ああっ、もうちょっと観たい!」みたいな喪失感を感じさせる作品ってやっぱり凄いと思います。
天穂のサクナヒメの購入した理由自体はゲームさんぽでプロモーションされているのを観て、「稲作なんてニッチなところをゲームに組み込むとか凄いな。こういうゲームを世に出してくれたこと自体が凄いと思うし投げ銭がてら買っておくか」という感じです。
正直、厄災の黙示録が発売するまでのつなぎにプレイするかーくらいの気持ちだったんですが、すっかり心にクソデカ感情を刻み込まれてしまい、ぜんぜん厄災の黙示録がプレイできてません。
2020年いろいろありましたが、この作品に出会えたことは素晴らしい出来事だったと思っています。